2009年11月22日  全国医師ユニオン声明

「医療機関における全国的な労働基準法違反

 および勤務医への賃金不払いに抗議する」

 全国医師連盟および全国医師ユニオンが36協定の全国調査を行った結果、全国の公的な医療機関の多くに労働基準法違反があることが判明した。今回の調査結果は、勤務医の労働問題に関する厚労省行政の無作為が医師数抑制政策を安易に実行させ、勤務医の過重労働を促進し、多くの勤務医を疲弊させ医療崩壊を引き起こした事実を労働の面から裏付けるものである。

 これらの違法は法治国家において許されることではない。また、病院管理者はもとより監督官庁の法律遵守に対する意識の欠落を指摘せざるを得ない。今回の調査は、36協定という書類上の調査にすぎないが、実態労働ではさらに多くの労基法の違反があると推測される。法律に基づいた一刻も早い勤務医の労働条件の改善が求められる。

 一方、36協定において1ヶ月80時間の過労死ラインを超える時間外労働を認める協定が多くみられる。絶対的な医師不足の中で、地域医療を守るためには一定の長時間労働を勤務医が担わざる得ない現状があることは事実であるが、そのことを理由に漫然と長時間労働を認めることは許されない。勤務医の労働時間を減らす様々な取り組みを行うと同時に、医師の健康悪化と医療事故を誘発する危険性の高い、長時間の連続労働を防止する対策を取る必要がある。

 さらに、いわゆる救急医療などを含む当直業務を「ほとんど労働の必要がない」宿直扱いとして、または一定の当直料を支払うことで、労働基準法に定められた時間外割り増しや深夜割り増し賃金を払わないことにより、莫大な不払い賃金が発生していると考えられる。また、名ばかり管理職の残業未払いや業務による待機時間への不払いも横行している。

 仮に勤務医の三分の一の医師6万人に当直や長時間残業で300万円の不払いがあるとすれば、1800億円となり、これに名ばかり管理職の時間外労働や待機時間に関する不払いが加われば年間2000億円規模の不払い賃金が存在することになる。正確な実態は不明であるが、これらの不払い賃金が、24時間の医療体制を担い長時間労働を行う勤務医の地位を著しく低下させ、これらの勤務医のやる気をなくさせている要因の一つであることは明らかである。

 私たち全国医師ユニオンは、長時間労働や深夜労働を行う医師を高く評価し、労基法に基づいた当然の賃金を払わせることを強く求める。これら労働法遵守は勤務医のやる気を高め医療崩壊を防ぐうえで必要不可欠な最低限の政策である。

 ただし、これに対応した診療報酬が払われなければ多くの医療機関が倒産し、医療崩壊がさらに進むという構造となっている。多くの勤務医は不払い労働に不満を持ちながらも、病院経営を気遣い声を上げることができずにいた。私たちは、正当な報酬が勤務医に支払われるように勤務医の労基法遵守加算のような診療報酬制度の必要性を強く訴える。

 また最近、開業医と勤務医を対立させるような議論が行われているが、勤務医の賃金が適切に払われることが重要であり、現在の医療費の中で開業医と勤務医がパイの取り合いをするような構図を作ることには、極めて有害な議論である。

 高齢化の進行と医学の発展は、医師のマンパワーをさらに必要とするが、かなりの期間にわたって深刻な医師不足が改善される見込みはなく、当面はさらに悪化することは明らかである。開業医がやる気をなくせば、勤務医の負担は更に増えることは自明の理であり、勤務医と開業医のどちらにも働くインセンティブを与える必要がある。

 低医療費政策と絶対的医師不足のもとで必要なことは、これまで医療政策を転換し医療崩壊を防ぐために、医師が健康でやり甲斐を持って働ける環境を整備することである。

 私たち全国医師ユニオンは、政府・与党及び厚労省に対して勤務医の労働条件の速やかな改善を行うことを強く要請する。