「医師の残業規制の5年猶予」に関する声明
2017.03.28
全国医師ユニオン代表  植山直人

政府は、働き方改革の焦点となっている罰則付きの残業規制について、病院勤務の医師への適用を法律の施行から5年後に遅らせる検討に入ったとの報道があります。私たちは、国が単月100時間未満の時間外労働を合法化すること自体に反対ですが、さらに法の下の平等を侵害する医師への適応を5年間遅らせることに強く反対します。
私たちは結成宣言で以下のように述べています。
「私たちは、医師の過酷な労働環境が仲間である医師を過労死に追いやったこと、多くの医師の健康を奪ってきたこと、その家庭を破壊してきたことを告発するとともに、怒りをもって抗議します。」、「医師が、肉体的にも精神的にも健康で、やりがいを持って働くことは、今日の医療にとって欠かすことのできない必要条件です。」
私たちは、勤務医の労働環境改善のために活動してきましたが、医師の長時間労働は全く改善せず、医師の過労死はあとを絶ちません。昨年だけで3件の医師の過労死に関する報道がありましたが、これらは氷山の一角にすぎません。特に当直業務に携わる医師は30時間を超える連続労働が当たりまえという非常識な労働がいまだにまかり通っています。
 一方、長時間労働の大きな弊害として医療の安全性の問題があります。医師の長時間労働が医療安全を脅かすことは明らかです。医療の安全性の問題は国民にとっても大きな関心事であり、欧米先進国では医師の労働時間には安全性の視点から規制が設けられています。私たちは、厚労省に対して医療安全の視点から労働時間の規制を求めてきましたが、厚労省では担当する部局も明確ではなく、国はこの問題に関して何ら責任を持っていません。
このような問題が長期にわたり放置されていることは、医療行政・労働行政の不作為と言わざるを得ず、強く抗議するものです。
 医師への残業規制を遅らせる理由として、「医師が1人しかいない山間部の診療所などでは、患者を診察しきれなくなる可能性がある」や「地域医療に混乱を来す恐れがある」などが挙げられていると聞きますが、何ら解決策を示さない先送りは、現場で医療を守るために奮闘する医師の健康を奪い医療安全を脅かすだけです。長時間の連続労働をなくすためには欧米先進国では常識となっている交代制勤務の導入が必要であり、そのためには医師の増員が必要です。しかし厚労省の必要医師数の推計では交代制勤務の導入は検討されておらず、将来医師は余るとされています。このため医師増員どころか医師数の削減を求める意見さえ見受けられ、医師の労働改善の展望が全く見えないのが現状です。
 もし仮に5年間の猶予を決めるのであれば、この5年間でどのような政策を実施し医師の過重労働をなくすのか明確に示す責任があります。これができないのであれば、現状放置の単なる先送りに過ぎないと言えるでしょう。