勤務医労働実態調査2017 集計結果の概要

2017年11月9日

勤務医労働実態調査2017実行委員会

 

はじめに

勤務医労働実態調査2012からすでに5年以上がたっている。医師の負担軽減が医療界の課題となってから久しくなるが、勤務医の過重労働は改善されずに、医師の過労死が起き続けいている。この間、勤務環境改善支援センターが各都道府県に設置されるなどの動きはあったが、ほとんど機能していないと考えられる。一方、今年に入り働き方改革の方向性が示され、5年の猶予はあるものの医師に対しても労働時間規制が適応されることになっている。このことにより勤務医の意識に変化が起きていることも推測される。また、今年に入り労基署が病院に臨検に入り医師労働に関して指導を行う例が増えていると考えられる。さらに、来年度より新専門医制度が開始されことになっておりこれも医師の労働に大きな影響を与えると考えられる。このような変化の下で、新たに勤務医の労働実態の調査と働き方改革や新専門医制度等に関する意識調査を行うことが求められていた。

私たち全国医師ユニオンは、医労連等に呼びかけ勤務医労働実態調査2017実行委員会を起ち上げ、各学会をはじめとする医療団体に協力を要請し7月1日より9月30日の間に約1800名の勤務医のアンケートを集め分析を進めている。

今回の調査結果は、概要をできるだけ早く公表し厚労省の検討会にも反映させるため、すでに集計の終わった1621名(WEB回答を除く)のデータを公表するものである。(なお、最終結果は来年1月に公表予定)

 

1、アンケート結果の特徴

今回の調査結果の特徴を一言で言うとすれば、多くの面で5年前の調査とほとんど変化がないということである。業務負担の軽減に関しては、この2年間で「減った」が16.9%に対し「増えた」が45.5%という結果であった。当直回数は「減った」との回答が「増えた」との回答を上回っているが、交代制勤務の推進や当直明けの勤務の改善は進まず、長時間連続労働は基本的に改善していると言えない。また、いまだに多くの医療機関が客観的時間管理を行わずに自己申告に任せている。

医師労働の改善策としては、「改善してほしいこと」のトップは「完全な休日を増やす」で、「改善に有効な方法」のトップは「医師数の増員」であった。

医療安全では、当直明けの連続勤務に関して「集中力や判断力」が「大幅に低下」と「やや低下」の合計が79.0%、診療上のミスに関して「相当ミスが多い」と「ややミスが増える」の合計が26.8%みられた。健康状態や「やめたいと思うこと」などでは、わずかな改善はあっても大きな改善は認められず、傾向は変わっていない。

また、新たな調査も行ったが、「『働き方改革』で改善すると思いますか」の問いに「ほとんど改善しない」が57.1%で、「大きく改善する」は2.2%「改善する」は16.4%にすぎない深刻な結果が認められた。医師数や診療科の偏在に関しては、「交代制勤務の導入に医師増員は必要か」では「大幅に増やす必要がある」と「ある程度増やす必要がある」の合計が86.6%、診療科の偏在に労働環境が関係していると考える医師が92.5%に上った。

2、それぞれの設問に関する結果の概要

1)アンケート回答者の主な属性

①有効回答1621名、男性1248名(77.0%)、女性名373(23.0%)。年齢別では20歳代119名(7.3%)、30歳代333名(20.5%)、40歳代400名(24.7%)、50歳代410名(25.3%)、60歳以上359(22.1%)となっている。

②雇用形態は、常勤1336名(82.4%)、非常勤158名(9.7%)、初期研修医71名(4.4%)、後期研修医  名37(2.3%)、大学院生5名(0.3%)、未回答14名(0.9%)となっています。また、勤務の開設主は、大学病院304名(18.8%)、国公立病院281名(17.3%)、公的病院308名(19.0%)、私的病院509名(31.4%)、診療所111人(6.5%)、その他38人(2.3%)、未回答 70(4.3%)となっている。

③勤務地域は、都市部700名(43.2%)、一般地域693名(42.8%)、過疎地域108名(6.7%)、未回答120(7.4%)となっている。(ここで、「都市部」とは、東京・大阪の全地域、各県の県庁所在地の市や政令都市などである。「一般地域」とは、上記を除く市など。「過疎地域」とは、郡・町・村など。)

 

2)働き方(労働時間・当直・休み等)

(1)当直を担う常勤医や研修医に負担が集中

1カ月の時間外労働時間は、常勤医では53.3時間であるが、当直を行っている常勤医では63.9時間と長時間になっている。また、初期研修医が65.9時間と最も長く、後期研修医は59.7時間であった。1カ月の時間外労働が80時間(過労死ライン)を超えている医師は、常勤医で4.9%、当直を行っている常勤医では7.3%、初期研修医が8.5%に対し後期研修医では18.9%と高い数字が示された。

一方、1カ月の休みに関しては、常勤医で4.7日、初期研修医が5.3日、後期研修医が4.9日と大きな差はみられなかったが、1カ月の休みが0日の医師が、常勤医で8.2%、初期研修医で4.2%、後期研修医で8.1%と看過できない実態が認められた。

労働時間の管理方法に関しては、「タイムカード等の客観的管理」が27.5%、「自己申告」が51.6%、「管理なし」が17.6%、「未回答」3.3%、と今だにまともな管理が行われていない実態が明らかになった。

 

(2)深刻な当直問題の実態は変わらず

長時間労働は、いわゆる当直と大きな関係がある。今回の調査では、日当直の仕事の内容に関して「通常と同じ」が36.9%、「通常よりは少ない」が47.8%、いわゆる宿直に当たる「通常業務はほとんどなし」は15.4%しか認めなかった。

また、交代制勤務の有無では「なし」が90.8%、「2交代制」が5.0%、「3交代制」が1.3%とほとんど導入が進んでいない現状が明らかになった。

当直明けの勤務に関しては、「通常勤務」が78.2%、「半日勤務」が15.7%、「勤務なし」が6.1%と30時間を超える連続労働がほとんど改善されていなかった。

 

3)医療安全:長時間労働が安全性を脅かす

医療過誤の原因としては、複数回答で1位が「医療スタッフ同士のコミュニケーション不足」917人、2位が「慢性疲労による注意力不足」906人、3位が「医療スタッフの人員不足」787人、4位が「診療時間が不足しているため」740人、5位が「医療技術の高度化によるリスクの増大」634人であった。

「当直明けの翌日の連続勤務と医療ミスの関係について」の問いでは、「集中力や判断力に関して」「大幅に低下」が36.3%、「やや低下」42.7%と約8割が低下と答えており、「変わらない」は6.1%に過ぎなかった。また、「診療上のミス」に関して、「相当ミスが多い」13.4%、「ややミスが増える」13.4%と3割近い医師が実際にミスが増加していると答えている。

さらに、「長時間労働時の安全管理に関して、特別な対策が取られていますか」の問いに、「対策が取られ、実施している」がわずか12.6%、「対策が取られているが、実効性がない」27.0%、「対策はとられていない」が31.7%、「わからない」21.0%、「未回答」7.7%となっている。

 

4)健康状態:多くの医師が健康不安と「やめたい」を実感している

健康状態に関しては、「健康に不安」33.8%、「大変不安」3.9%、「病気がち」2.8%と約4割の医師がなんらかの健康問題を抱えている。前回調査では「健康である」が52.7%であったが今回は58.4%とわずかに改善がみられるが、大きな変化は認められなかった。

「最近やめたいと思うこと」の問では「いつもあった」7.5%、「時々あった」が23.5%「まれにあった」28.8%と約6割の医師が、最近やめたいと思うことがあったと回答しており、前回調査からほとんど変化は見られなかった。

 

5)業務の負担軽減:この2年間で業務が増えたが45.5

あなたの業務負担は、この2年間で変わりましたか」の問に「増えた」が45.5%であるのに対し、「減った」はわずか16.9%、「変わらない」35.7%であった。この問は、「日当直回数」では「減った」19.8%と「増えた」11.9%を超え一部で改善が進んでいると思われる。(「わからない」57.7%、未回答10.6)

一方、診療時間では「減った」13.0%「増えた」30.7%、文書作業でも「減った」12.4%「増えた」41.6%、会議や委員会も「減った」8.5%「増えた」47.4%と著明な悪化が示されている。また、精神的なストレスも「減った」8.6%「増えた」42.8%と深刻な事態となっている。

 

6)労働条件の改善策:医師数を増やし完全な休日が取れるようにする

労働条件の改善策に関しては、「改善してほしいこと」(複数回答)として、1位「完全な休日を増やす」785人、2位「当直・日直回数を減らす」487人、3位「通常の業務を減らす」478、4位「医療安全システムの強化」457人、5位「残業代の完全支払い」408人となっている。

「改善に有効な方法」(複数回答)に関しては、1位「医師数の増員」1024人、2位「無駄な業務等を減らす」759人、3位「クラークなどの医療補助職の増員」754人、4位「看護師の増員」481人、5位「一定の医療行為の多職種への移行」441人となっている。

 

7)医師数及び診療科の偏在と労働条件

:交代制勤務には医師数増が必要、診療科と労働条件に関しては世代間格差が歴然

「交代制勤務を導入するには医師数を増やす必要がある」と思うかの問いには、「大幅に増やす必要がある」が31.8%、「ある程度増やす必要がある」が54.8%と9割近い医師が、増員が必要と考えている。一方「現状の医師数でよい」が5.6%、「わからない」0%、「未回答」7.8%であった。

「診療科の偏在について、労働環境の違いが関係している」と思うかの問いでは、「大きく関係している」が43.5%、「ある程度関係している」が49%と9割を超える医師が関係していると考えている。また、世代別に自分が診療科を選択するにあたって労働環境が関係したかの問いでは、「ほとんど関係ない」が60歳代、50歳代では約8割、40歳代では約7割、30歳代では約6割に対して、20歳代では33.6%と意識の変化が急激に進んでいる。

 

8)「働き方改革」:医師労働は改善しないが約6

「『働き方改革』で医師労働は改善すると思いますか」の問いに、「ほとんど改善しない」が57.1%、「大きく改善する」2.2%、「改善する」16.4%と肯定的な意見は2割以下であった(未回答24.4%)。改善しないと思う理由では、複数回答で「必要な診療体制を維持できない」627、「医療現場の法律は守られない」625、「医師を労働者と考えない風潮」500の順となっている。

一方、医師の労働時間規制に関しては、「賛成」が50.5%、「反対」はわずか14.7%で、「わからない」が30.1%、未回答4.7%であった。また労働時間規制の医師への適用の5年間猶予に関しては、「わからない」42.4%と最も多かったが、「賛成」17.2%に対して「反対」が35.2%と2倍以上となっている。

 

3、調査結果から見えてくるもの

調査結果に関しては、さらに詳細な分析を必要とするが、現段階で推測されることとして以下のものがあげられる。

①いまだに、多くの医療機関で労基法は守られておらず、勤務医に対する適切な労務管理が行われずに、当直問題を主要とする長時間労働問題はほとんど解決していない。

②当直回数を減らす取り組みはわずかながら進んでいると考えられるが、診療時間をはじめ、文書作業や会議等で、業務負担が「増えた」が「減った」を大幅に上回っており勤務医の負担感は増加している。これは、医療技術の進歩と高齢化等の進行による医療需要の増加にマンパワーの供給が追いついていないことが推測される。

③労働条件を改善するには何よりも完全な休日を保障することが必要であり、特に1カ月の休みが0の医師をなくすことは喫緊の課題である。

④長時間の連続勤務をなくすには交代制勤務の導入が必要であるが、それには医師の増員が絶対条件と言える。

⑤長時間労働は、判断力や集中力の低下を招き、医療ミスを増加させている。

⑥診療科の偏在には労働条件が大きくかかわっており、特に若い世代の意識は急激に変わっている。労働条件の改善策とリンクした診療科の偏在対策を早急に行う必要がある。

調査結果まとめ

勤務医労働実態調査2017 1、属性 2017.11.8

勤務医労働実態調査2017 2、働き方 2017.11.6

勤務医労働実態調査2017 3、医療の安全 4、健康状態や職場 2017.11.9

勤務医労働実態調査2017 5、業務負担の軽減 2017.11.5

勤務医労働実態調査2017 6、労働条件 2017.11.9

勤務医労働実態調査2017 7、医師数及び診療科の偏在 2017.11.8

勤務医労働実態調査2017 8、「働き方改革」について 9、パワハラ等 2017.11.6

勤務医労働実態調査2017 10、資料事故調査制度 11、新専門医制度 2017.11.6