活動トピックス

2025/6/26

【活動報告】医師ユニオンら、厚労省に医師労働環境の抜本改善を要請(資料・動画あり)

「人権侵害の一掃」と「長時間労働の是正」を強く訴え

2025年6月24日、日本医療労働組合連合会(医労連)と全国医師ユニオンは連名で、厚生労働大臣・福岡資麿氏に対し、医師の労働環境改善を求める要請書を提出した。両団体は、昨年施行された医師の働き方改革の限界を指摘し、長時間労働の温存や人権侵害の問題について抜本的な是正を訴えている。

「過労死ラインの2倍」を容認する現行制度

医師の時間外労働は、一般病院で年960時間、地域医療暫定特例水準(B水準)や集中的技能向上水準(C水準)では年1,860時間が上限とされている。これは「過労死ライン」の2倍にあたり、医労連らは「到底容認できない」と批判。医師不足を背景とした過重労働が、医師の健康と医療安全を脅かしていると主張している。

宿日直許可の乱発を批判

要請書では、夜間勤務(当直)の過酷さを強調。最高裁「大星ビル管理事件」判決が「仮眠時間も労働時間」と認定しているにもかかわらず、厚労省通達は「夜間に十分な睡眠が取れる」ことを条件に宿日直許可を認めており、現場では夜間労働が労働時間として適切に扱われないケースが多発しているという。また、宿日直時間を「勤務間インターバル」に算入する運用を「医療安全を無視するもの」と強く批判した。

自己研鑽問題と労働時間のごまかし

さらに、医師に課される「自己研鑽」についても問題視。診療ガイドラインの学習など、患者に標準的診療を提供するための知識修得は本来「業務」であり、「自己研鑽」と呼んで労働時間外とする現状は不適切だと指摘した。厚労省に対し、医師の研鑽と労働時間の関係を再定義し、病院の責任を明確化するよう求めている。

自治医科大・地域枠制度で人権侵害の訴え

地方医療の確保策として導入されている自治医科大学や地域枠制度に関しては、学生・若手医師の人権侵害が深刻だと訴える。奨学金返済の高金利や長期勤務義務(最長9年)などを問題視し、「憲法で保障される居住の自由に反する」と指摘。厚労省に対し、実態調査と人権擁護の徹底を要請した。

医療安全の観点からの労働規制を求める

医療安全の観点からも労働規制強化を求めている。勤務医労働実態調査(2022年)では、医師の8割超が「長時間労働は医療過誤の原因になる」と回答。トラック運転手など他業種では拘束時間が13〜16時間に制限される一方、医師は28時間連続労働が許容されており、「法的整合性がない」と批判した。

絶対的医師不足の解消を訴え

根本的な原因として「絶対的な医師不足」があるとし、医師養成数の増員を強く主張。都市部でも医師不足が深刻であるとし、OECD平均を参考に医師数を確保する必要性を訴えた。

具体的な要請事項

要請書は、以下の具体的な施策を挙げている:

  • 労働基準法の厳格適用と残業代支払い徹底

  • 宿日直許可基準の最高裁判決に基づく改定

  • 勤務間インターバルを現行9時間から11時間へ延長

  • オンコール待機の労働時間認定と賃金支払い

  • 交代制勤務の義務化

  • 長時間労働下での過失免責制度の検討

  • 医師養成数の増加

  • 医療機関への労基署の指導徹底

  • 医療安全を確保する診療報酬改定 など

さらに女性医師支援、メンタルヘルス対策、無給医問題の解消、医療労働者への法教育推進など、多岐にわたる要請が含まれている。

医労連と全国医師ユニオンは「医師の人権を守り、医療安全を確保するためには早急な改革が不可欠」とし、厚労省の誠実な対応を求めている。

資料ダウンロード:厚労省要請書2025