活動トピックス

2021/10/28

10/28 「厚労省との交渉」を医労連ととりくみました。

10/28 「厚労省との交渉」を医労連ととりくみました。

 

労基法違反をなくし勤務医の働き方改革を進めるための

要請書 

 

コロナ禍の困難な中で、日々、国民のいのちと健康をまもるためにご尽力されていることに敬意を表します。

5月21日に「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」(以下、医師の働き方関連法と記載)が可決されました。これにより「地域医療暫定特例水準」(B水準)と「集中的技能向上水準」(C水準)の時間外労働の上限が年1,860時間となることを認める政令が2024年4月から実施されると思われます。

私たちはいかなる理由があっても年1860時間の時間外労働を認めること自体に反対であり、過労死を容認するような36協定の締結に協力することはできません。適切な36協定を結ぶことで勤務医の命と健康を守ることになるでしょう。

この間の厚労省の検討会資料では、1860時間を超えて働く医師が10%を超え、病院全体の27%、大学病院の88%に該当する医師が存在するとされています。しかし、年1860時間の時間外労働を認める36協定は極めてまれであり、多くの病院の36協定は960時間以下です。(資料-1参照)勤務医の健康を確保するためには36協定違反を適切に取り締まることが重要です。

なお、医師の長時間労働の最も大きな要因は夜間の当直です。しかし、入院中の重症患者や救急対応を行っているにも関わらず、宿直許可を取っていることを理由に、当直時間を労働時間に入れていない病院が少なくありません。これでは、実際の労働時間が反映されずに医師の健康を守ることはできません。宿直許可に関しては、厚労省の「医師、看護師等の宿日直許可基準について」の通達に基づき、厳格に適応する必要があります。

次に重要な点として、労働時間と労働時間にあたらない自己研鑽の時間をどのように適切に判断するかという問題があります。一部の大学では、「診療ガイドラインについての勉強」や「新しい治療法や新薬についての勉強」などを労働時間に該当しない研鑽例として示しています。この場合の「上司の明示・黙示による指示で行う時間は労働時間」になるとの補足はありますが、「上司の明示・黙示による指示」が曖昧であるため、労働時間として認められていないケースが出ています。

また、今回の法律では「健康確保措置」が設けられることになりますが、過労死ラインを大きく超える勤務医の労働実態があることから、今すぐ健康確保措置を実施することが求められています。しかし、28時間以内の連続勤務や勤務間インターバル、代償休息の付与を行っている医療機関はわずかです。一日も早く健康確保措置を実施する必要があります。

今後、C水準に関する議論が進められることになりますが、専攻医の約18%が中等度のうつ状態であるとの調査結果が出されています。(資料参照-2)このような、深刻な現状があることを真摯に受け止め、専門医制度やC水準の在り方に関しては健康確保のみならずワーク・ライフ・バランスの視点から、しっかりとした議論をおこなう必要があります。

また、大学病院などで働く医師のアルバイトに関しては合算した労働時間で労務管理を行わなければ健康を確保することはできません。医師の長時間労働の多くはパワハラの下で命じられています。自己申告による労働時間は実態を反映しません。少なくともB水準とC水準に関しては合算した客観的な時間管理を義務化する必要があります。

この間、無給医問題で労基署が大学院生も診療等の業務を行う場合は労働者であると認め是正勧告を行ったことは高く評価できるものです。しかし是正勧告を受けた大学病院は、大学院生の外来診療しか労働と認めない対応をとっていると聞きます。今後、無給医問題の解決のためには労基署等は厚労省が示している「医師の研鑽と労働時間に関する考え方について」(H30年11月19日)に沿って適切な指導を行うことが求められています。

また、女性医師には特別な配慮が必要です。初期研修や後期研修(専攻医)の時期と、出産や子育ての時期が重なる中で、育休が取れないなどの深刻な状況に置かれている女性医師は少なくありません。厚労省として、女性医師が活躍できるよう、具体的な問題点の把握と解決策を提案する検討会を作り、速やかに問題を解決することが求められています。

第5波の新型コロナウィルス感染拡大は深刻な医療崩壊を起こしました。 医師・看護師などのスタッフ不足から充分なベッドを確保できずに、入院を必要とする患者が自宅療養とされ死亡する例が後を絶ちませんでした。感染症に即応するための医師、看護師、コメディカルなどの体制強化が求められています。

また、大学の働き方改革に関しては厚労省と文科省が協力して取り組むと聞きますが、裁量権のない助教等に対する裁量労働制は違法であり、大学院生等を最低賃金ギリギリの低賃金で働かせることは均等待遇の原則に反します。大学の医師が研究、教育、診療において適切な環境下で十分な能力を発揮できるための改革が求められています。

最近、地域枠制度で入学した医学生から、地域枠入学であることを理由に人権侵害が進んでいるとの訴えがあります。厚労省として人権侵害をなくし、本来求められる医師養成を行うために適切な対応が求められています。

つきましては、下記のとおり勤務環境改善に関して要請します。

 

1.医師及び医療スタッフの増員について

①日本の医師はOECD平均に比べて約14万人も不足している。夜間の時間外労働にあたる当直を全て交代制勤務とし過労死ライン以下の労働条件を実現するために必要な医師数を明らかにすること。また、これに基づき医師養成数を増員すること。

②医師の増員のみならず、看護師やその他の医療スタッフの増員を行うこと。医師の業務軽減は、医行為などの看護師への業務委譲ではなく、専門職を養成し配置すること。

③感染症指定病床を抜本的に増やすこと、また感染症に即応できる医師、看護師、コメディカルなどの体制を強化すること。

 

2.医師労働に関すると労働法遵守と夜間労働の適正化、自己研鑽について

①医師の働き方関連法の付帯決議10にある「医療機関の管理者、中間管理者の医師等に関して、労働法制に関する研修・教育」を徹底すること。

②現在、医師に対する労基法違反が横行していることに鑑み、病院の医師労働に関する労基法違反への勧告や指導を強化することを労基署に求めること。また、36協定の重要性を病院管理者に理解させ遵守させること。

③医師の働き方関連法の付帯決議8にあるように第二次救急や急性期病院において通常の

診療を行う場合には時間外労働として適切に扱うこと。なお、詳細に関しては令 和 元 年 7 月 1 日厚生労働省労働基準局長の基 発 0 7 0 1 第 8 号に基づき、「宿日直の許可」は「一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること」を徹底すること。また、医療安全の点からも交替制勤務を導入し、当面連続労働の上限をトラック運転手と同様の16時間とし、速やかこれを実現すること。

④労働時間の自己申告をやめさせ客観的を徹底させること。アルバイトの労働時間に関しても、自己申告とせずに適切な健康確保措置をとるために客観的な時間管理を義務化すること。

⑤自己研鑽の拡大解釈を行わないこと。診療ガイドラインについての勉強、新しい治療法や新薬についての勉強、自らが術者等である手術や処置等についての予習や振り返り、シミュレーターを用いた手技の練習等、などは患者の治療に不可欠の業務である。曖昧な「上司の明示・黙示による指示」が必要とせずに、労働時間として認めること。大学院生の診療に関しては、入院患者に対する診療や検査等に関しても労働時間として認めること。

 

3.女性医師への支援、無給医問題と均等待遇、裁量労働制、研究者の労働条件、地域枠学生への対応について

①医師の働き方関連法の付帯決議15にあるように、女性医師の出産・育児等の環境の整備を進めること。また、女性医師の出産・育児は初期研修や後期研修等と重なり、専門医制度などとも関連するため、実態調査を行い適切な制度を作るために女性医師の働き方改革に関する検討会等を設置し、着実な解決にあたること。

②無給医を完全になくすこと及び医師に対して均等待遇に基づく適切な賃金を支払うこと。無給医や均等待遇に反するような労務管理がなされているような病院はB・C水準として認めないこと。

③大学病院において裁量権のない助教等に裁量労働制を適用させないこと。

④研究に従事する医師に関しても適切な処遇を行うこと。

⑤地域枠医学生への奨学金の10%程度の利息を日本学生支援機構なみの利息(0.16%程度)に引き下げ、拘束期間を6年間以内とすること。また離脱希望者へも人権侵害とならないよう適切な対応を行うこと。

 

4.財源の確保について

①上記の措置を実施するために、国の責任で必要な財源と体制を確保すること。そして、医療機関が必要な医療を提供できるように、診療報酬の適正な増額を行うこと。

②また、研究者が適切な労働条件で働けるよう、厚労省は文部科学省と協力して財政的な対応をとること。

 

厚労省要請書 全国医師ユニオン・日本医労連2021年10月28日